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はじめに

ふるさと銀河線沿線応援ネット10年の活動と名称変更への思い

 くしくもふるさと銀河線の廃線から10年を迎えた本年、JR北海道は「単独での路線維持が困難」として石北本線の事業見直しを打ち出しました。再び、地域の公共交通権が奪われ、オホーツク圏の衰退を招きかねない事態が引き起こされています。

 私たちふるさと銀河線沿線応援ネットワークは、ふるさと銀河線の存続運動を担った「ふるさと銀河線再生ネットワーク」を引き続き、「廃線後こそ地域の衰退が心配だ!」として「再生ネット」を「応援ネット」に変え活動を続けてまいりました。鉄道存続運動の多くが、廃線とともに姿を消したのに対し、廃線の後の公共交通の確保と沿線地域の活性化を願い活動してきた稀有な組織であります。

 「再生ネット」及び「沿線応援ネット」の運動を通し私たちにはいくつかの教訓を得ることが出来ました。それは、「生活路線としての公共交通を維持するためにも、まちづくりや観光政策と連動し、沿線地域への移動人口・交流人口を拡大させなくてはならない」ということであり、そのような「着地型観光・滞在型観光を定着させていくためには近隣市町村との地域連携が必要である」ということです。

 JR北海道が7月29日に打ち出した鉄道事業見直し(「持続可能な交通体系のあり方」について)に対し、北見市長は「鉄路存続の危機」にとどまらず「地域全体の存続の危機」との認識を表明しています。まさにその通りと思います。石北本線問題が突き付けているのは、単なる鉄道存続問題ではなくオホーツク圏全体の将来をどう構想していくのかの問題だと思います。そしてその答えを導くものが先の述べた私たちの活動から得た教訓だと思います。

  北海道は地方創生のテーマとして「食と観光」を打ち出していますが、北海道最大の食糧供給基地であるオホーツクにおいて食と観光を結び付ける議論や構想は極めて低調です。    かつて、ふるさと銀河線再生のプランとしてソフトバンクはレストラン列車の運行を提案しました。また我々応援ネットも沿線応援ツアーとして、訓子府駅舎において農家によるツアー客への朝食提供や野菜市を他に先駆けて実施してきました。レストラン「紀の里」での昼食を盛り込んだバスツアーも実施しました。これらの取り組みは訓子府町を「食の町」と位置づけ、これを観光につなげようとしたものです。訓子府メロン、はちみつ、地豆、無農薬・自然栽培野菜など「訓子府の食」と観光をつなげるテーマはまだまだたくさんあります。

置戸においては森林鉄道跡探索をテーマにした沿線応援ツアーを実施しました。森林鉄道をテーマにしたツアーはその後も温根湯森林鉄道跡、滝上森林鉄道跡ツアーへと拡大し、特に滝上観光協会は札幌からのバスツアーを実現させたり、丸瀬布いこいの森との連携ツアーも実施しています。将来的には滝上、丸瀬布、温根湯、置戸を縦断する森林鉄道の広域観光を育てることも可能ですし、更に津別や札弦への拡大も追及できます。

 北海道新幹線や千歳あるいは女満別への航空便を一次交通とするなら、そこからオホーツク各地へと運ぶ二次交通が石北本線です。石北本線を観光路線としていくためには沿線周辺のさまざまな資源を観光化し、石北本線各駅からそこに向かうる三次交通(=バス路線)が拡充されなくてはなりません。そうしたオホーツク全体の公共交通再生計画が必要です。

  私たちは石北本線問題と旧ふるさと銀河線沿線地域の活性化は密接不可分だと思っています。石北本線は生活路線、都市間移動、物流、観光の4つの機能を持っていますが、持続的再生を可能にするものは観光路線としての魅力を拡充していくほかはありません。そしてそのためにも、北見〜訓子府(食観光の町)〜置戸(林業観光の町)〜陸別(鉄道観光の町)を結ぶふるさと銀河線沿線地域の観光化と代替バスや路線バスを利用した沿線観光プラン、地元イベントへの近隣市町村からの「参加バス」の運行、「日帰バスパック」の設定など、沿線バス利用の拡大策を提案、実践してまいります。

 石北本線問題は極めて厳しい危機的問題ですが、これを機に、沿線地域はもちろんのこと、オホーツク全体が将来のあり方を真剣に考え、構想し、行動に移していくことで「災い転じて福と成す」ことが可能になると思いますし、しなければならないと思います。

「鉄道の危機を地域再生へつなげる」こと、それこそが私たちが「再生ネット」と「応援ネット」を通じて実践してきたことです。直接の課題が石北本線に変わったとしてもその目的やそのためのふるさと銀河線沿線地域との係わりは何ら変わるものではありません。

 ただ違うことは、石北本線問題解決の困難さということです。問題を突破していくためには、行政、一次産業関係者、商工業者、観光関係者等多くの階層の個人団体を糾合していく必要があります。ネットの会員も多様な人材の参加が必要になります。会の名称に「石北沿線」の文言を入れましたのは、その方が当面する課題が解かりやすく、関心を持つ人々の結集も得やすいやすいのではないかと判断したからです。

 そして、「ふるさと」の文字を残すことによって、銀河線の存続運動と沿線応援活動で得た教訓を継承し、石北線沿線に留まらない広域連携を進めていく思いを表しています。

 

 

2016820

石北沿線ふるさとネットワーク