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オホーツクのテロワールを食す(その1)
オホーツクのテロワールから生まれる濃密なさくらんぼがあります。

オホーツクのさくらんぼの樹に蜂が蜜を吸いに来る
ボルドーの銘醸地・グラーブが「砂利の多い土地」の意味であるように

 北海道オホーツクの内陸部、北見市の北側に位置する「昭和地区」。かつて「野付牛(のつけうし)原野」と呼ばれたその丘陵部は石ころガラガラの荒地でした。
 石川果樹園を創始した石川岩太郎がこの地に入植したのは大正6年、今から90年以上も前のことです。
とても畑が作れる場所ではありません。しかし、そこは桂の木の巨木が林をなしていました。岩太郎はこの地が樹木の育成に適性があるのではと直感し、まずは苗木の生産栽培を始めることを決意しました。

 石ころだらけの土壌は水はけがよく、樹木の根は水を求めて地中深く根を掘り進みます。その深く張り巡らされた根は大地から水と共に様々なミネラルを必死に吸い上げるのです。ヨーロッパのワイン銘醸地といわれる土地は概して小麦の育たない痩せた土地です。その土地を「テロワール」として大切にしてきた秘密がここにあります。
 厳しい土壌ゆえに獲得された「強靭な生命力」、それは肥沃な土地では決して得ることのできない荒地が作り出した樹木の特質となるのです。

ブドウ栽培の北限近くにワインの名醸地があるように

 ワイン発祥の地は、古くメソポタミアの地といわれています。そして気候に恵まれた地中海地方では豊富にぶどうが栽培されます。しかし、ヨーロッパワインの銘醸地といわれるところは、ブルゴーニュやボルドー、ロワールにしても何故かブドウ栽培の北限近くにあります。不規則な雨、 季節外れの寒さ、遅霜等、ブドウ栽培の苦労は地中海地方の比ではありません。 しかし、その悪条件を乗り越えるならば、むしろ北の方がはるかに優れた果実を得ることができるのです。一日における寒暖差の大きさ、季節の移ろいによる寒暖差の大きさが明らかに果実の糖度を上げ、果実味を深く複雑なものにするのです。

石ころだらけの土壌とオホーツクの風、そして樹木作り90年余の歴史と技術から北限のさくらんぼが生まれる


 北見市の保護樹木スズカケの木  北見市の保護樹木キリの木
日本でも「屈指の苗木作り」と評価された技術を誇るように、スズカケとキリの巨木が市の保存樹木に指定されている。 

 石川岩太郎はオホーツクはもとより、北海道の果樹栽培でも先駆的な存在です。昭和8年に記された「果樹苗木販売免許者調」では北海道内わずか58軒の「仕立販売」業者の1軒として名を連ねています。また同じく昭和8年に刊行された「野付牛大観」にも学校や公園などと並んで「石川果樹園」が図示されています。
 苗木の生産では全国的な評価も受けます。昭和初期の雑誌「園芸」では「やぶこうじやおもと等の古典植物の苗木では日本でも一、二を争う」と報じられ、全国園芸農家の範として、多くの農家にその技術を伝えています。極寒のオホーツクの冬をやり過ごすための様々な工夫が、この上なく強い苗木を世の中に送り出したのです。

 こうした苗木生産技術の確立が果樹栽培にも生かされます。岩太郎は苗木生産の、わずか2〜3年後に果樹生産にも着手します。梅、りんご、ぶどう、さくらんぼです。そして、この地における果樹栽培の適性に自信を深めます。


 昭和8年の果樹苗木販売免許者調べ
 「仕立販売」とは生産販売のこと、右から5番目に石川岩太郎の名前がある。
 昭和8年当時の野付牛町の観光地図
 昭和8年当時の野付牛町(現在の北見市)の観光地図にも石川果樹園が載せられている

 オホーツクの冬はとりわけ厳しく、シベリアから吹き下ろす北風は容赦がありません。春を遅らせるのもシベリアからの北風です。この北風さえ凌ぐことができればここの果樹園の木々たちは十分な実をつけてくれるのです。

 石川果樹園は「昭和地区」丘陵部の南斜面にあります。果樹園北側の斜面は上へとつながり、カラマツや蝦夷松の林が巨大な防風林となって果樹園を守ってくれます。
 この北風さえ遮ってくれれば、オホーツクの風はさくらんぼの受粉に重要な働きをしてくれます。6月、気温の上昇にあわせて、さくらんぼの花が一気に満開を迎えると、爽やかなオホーツクの風がこの丘を満たし、蜂たちと共に花から花へと花粉を運んでくれるのです。
果樹園の丘から見た北見盆地
                                            6月、果樹園の丘から北見盆地を見渡す。

自然を知るからこそ、任せることと手を入れるべきことが判る


 今の石川果樹園を切盛りしているのは、石川一郎さん(65歳)。石川さんは1年365日をほとんど欠かすことなく、雨の日も雪の日も、この昭和地区の丘に通っています。
 物言わぬ自然や生き物を相手にするということは、毎日の変化に気づく事に他なりません。だから、石川さんは毎日果樹園の全てを、果樹の一本一本を見て回るのです。自然の中では何一つ昨日と同じこと、去年と同じことはありません。その変化に一日でも早く気づき、長い経験の中から最良の解決策を講ずること、農民の仕事とはまさにこのことなのです。
 果樹を育てるということ、果実を収穫するということは、自然であると同時に自然ではない行為です。この矛盾が農業なのだと思えばこそ、石川さんは自然に任せることと人が手を入れることの両方の大切さを知っています。石川さんの果樹園には多種多様な重機や機械があります。もう何十年も前から使っているものもあり、さながらここは農機具の博物館のようです。石川さんはこれらの機械を駆使して、果樹に最適な環境整備を行っているのです。

 石川一郎さんの写真   農機具の写真 
 石川さんは多種多様の機械たちは操る。ここはまるで農機具博物館のようだ。

 何より、自然でなくてはならないと考えていることは受粉です。果実の実りにとって受粉は決定的に重要です。それはまさに種の保存の根本であり、自然の営みの最も不思議な過程なのですから。

 石川さんは、この受粉に人の手をかけません。有名生産地と云われる農家のほとんど人工授粉に頼っている中で、石川さんは風と虫による受粉、風媒と虫媒という自然本来の受粉に全てを委ねます。そのために、果樹園の中には主たる栽培品種である「南陽」の樹だけではなく、佐藤錦、たかさご、ナポレオン、サミットなど多様な品種のさくらんぼが植えられています。こうした品種の多様性こそが果樹園の植生の強さを作り出すとともに、しっかりとした味覚の強さをも生み出す源泉となっているのです。

小さな赤い実の中に、凝縮された風土と土壌のめぐみが実感できる

 石川さんのさくらんぼを食べた方は、そこにさくらんぼ本来の「味」があることを理解していただけるでしょう。しっかりとした歯応え、酸味と甘みの絶妙なバランスと味わいの強さ。ただ糖度が高いだけでは果実ではありません。果実独特の酸味がなければ旨味としての感動を得ることはできません。そして味に複雑さをもたらす豊かなミネラル感。まさに三拍子が揃ったこの絶品の味を舌にすると、甘みだけを重要視する現代人の味覚感覚は鋭いしっぺ返しを喰らうことになります。
 「軟らかく甘い」というあまりに単純化された貧困な「美味しい」ではなく、「至福の味わい」がこのさくらんぼにはあります。まさにこれはオホーツクのテロワールが生み出した味わいに他ならないのです。



オホーツクのテロワールを食す石川果樹園のさくらんぼ(南陽)
    (栽培地)北海道オホーツク北見市昭和地区
さくらんぼ(南陽)1kg詰め


 

  

  バラ詰め、発泡箱でお送りします。
  (左の写真参照)

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